第01章:記憶のざわめき

午後の陽射しが、カフェ「ミレニアム」の窓をやさしく照らしていた。
木のぬくもりが残る店内には、コーヒーの香りと、静かなジャズが漂っている。
その中で、青年・遥人(はると)は、いつもの席に座っていた。

彼はこのカフェに通い始めて、もう半年になる。 きっかけは、偶然だった。
引っ越し先の近くにあったこの店に、ふらりと立ち寄ったのが始まり。
けれど、なぜかこの場所には、妙な“懐かしさ”があった。

「ご注文は、いつもの抹茶ラテでよろしいですか?」

声をかけてきたのは、ウェイトレスのしずく。 長い青髪に、透き通るような肌。
どこか浮世離れした雰囲気をまといながらも、彼女の笑顔は、いつも穏やかだった。

「うん、ありがとう。君って、なんだか不思議な人だよね」
「よく言われます」
「前にも会ったこと、あったっけ?」
「さあ…どうでしょうね」

しずくは、微笑んだまま答えた。
その笑顔に、遥人の胸がまた、ざわついた。

夜、帰宅した遥人は、ふとした衝動で古い日記帳を開いた。
それは、祖父が遺したものだった。
ページをめくると、そこに一枚の写真が挟まっていた。

白黒の写真。
そこには、若き日の祖父と、見覚えのある女性が写っていた。
長い髪、知的な瞳、そして翡翠色のリボン。

「……え?」

写真の裏には、こう書かれていた。

“また、会おう。しずくより。”

遥人の心臓が跳ねた。 この名前、この顔。
まさか、そんなはずはない。
でも、確かに彼女は、今もあのカフェでラテを淹れている。

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