1話目:はじまりの丘 ― 生まれた日

この物語は、
一匹のボーダーコリーが、立派な牧羊犬になるまでを紡いだ物語。
丘の上の牧場で、
朝露に光る藁の上、
ぼくは生まれた。
母さんのぬくもりの中で、
兄弟たちとくっついて眠っていたけれど、
なぜか、ぼくだけが目を開けていた。
外の光が、まぶしくて、あたたかくて、
その向こうに何かがある気がしたんだ。
母さんが、ぼくの頭をぺろりとなめた。
「あなたは、よく生まれてきたわね。
きっと、立派な牧羊犬になるわよ。」
ぼくは、まだ言葉を知らないけれど、
母さんの声の響きが、心にしみた。
そのとき、
藁の向こうに、大きな足音がした。
土の匂い。革の匂い。
おじさんの足元が、そっと近づいてきた。
「この子は、目がいいな。
きっと、群れをよく見る犬になる。」
ぼくは、まだ何も知らない。
でも、なぜか心の奥で、
“何かを守る”という気持ちが芽生えていた。
ぼくの物語は、ここから始まった。