3話目:笛の合図 ― 人との絆

草の上、風がやさしく吹いていた。
空は青く、雲はふわふわ。
ぼくは、羊たちのそばにいた。

そのとき──
「ピィィィーッ!」
空気を切るような音が響いた。

びっくりして振り返ると、
あの娘さんが、口に笛をくわえていた。
そして、片手を高く上げていた。

「……あれは、なんだろう?」

羊たちは娘さんの方を見ている。
先輩犬も、じっと動かずに構えている。

ぼくは、先輩犬の動きを真似してみた。
体を低くして、羊を見つめる。
吠えない。ただ、目で伝える。

でも、うまくいかない。
羊たちは、ばらばらに動いてしまう。

「ピィィィーッ!」
また笛の音。
今度は、手が違う方向を指していた。

何度も、何度も、繰り返すうちに──
ぼくは気づいた。

「あの音と手の動きが、合図なんだ。」

娘さんの手が動くたびに、
先輩犬が動き、羊が動く。

「ぼくも、あの合図を覚えれば……」

その日、ぼくの中に
“人の言葉を聞く耳”が生まれた。

類似投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です