2話目:遊び ― 芝生の庭で

君の家に引っ越した日のこと、
ぼくはまだ、何が起きたのかよくわかっていなかった。
いつものペットショップの窓辺から、
君の腕の中に抱かれて、
車に乗って、知らない場所へ向かった。
でもね──
君の家に着いて、
庭の芝生の匂いを嗅いだ瞬間、
ぼくはわかったんだ。
「ここが、ぼくの新しい世界なんだ」
塀に囲まれた庭。
やわらかい草の感触。
君の笑い声が、空に響いていた。
ぼくは走った。
君も走った。
ぼくらは、ただ夢中で走った。
引っ越して自由に暮らせるようになって、
ほんとに嬉しかったんだ。
君がぼくを呼ぶ声。
ぼくが君に追いつく足音。
風が耳をくすぐって、
しっぽが勝手にふりふり動いていた。
あの頃は、目新しいものばかりだった。
庭の隅に咲いていた花も、
君の靴の匂いも、
ぼくにとっては全部が冒険だった。
あの頃のことは、ぼくにとって大切な思い出。
君とぼくが、
初めて“家族”になった季節。