午後の陽射しが、カフェ「ミレニアム」の窓をやさしく照らしていた。
木のぬくもりが残る店内には、コーヒーの香りと、静かなジャズが漂っている。
その中で、青年・遥人(はると)は、いつもの席に座っていた。
彼はこのカフェに通い始めて、もう半年になる。 きっかけは、偶然だった。
引っ越し先の近くにあったこの店に、ふらりと立ち寄ったのが始まり。
けれど、なぜかこの場所には、妙な“懐かしさ”があった。
「ご注文は、いつもの抹茶ラテでよろしいですか?」
声をかけてきたのは、ウェイトレスのしずく。 長い青髪に、透き通るような肌。
どこか浮世離れした雰囲気をまといながらも、彼女の笑顔は、いつも穏やかだった。
「うん、ありがとう。君って、なんだか不思議な人だよね」
「よく言われます」
「前にも会ったこと、あったっけ?」
「さあ…どうでしょうね」
しずくは、微笑んだまま答えた。
その笑顔に、遥人の胸がまた、ざわついた。
夜、帰宅した遥人は、ふとした衝動で古い日記帳を開いた。
それは、祖父が遺したものだった。
ページをめくると、そこに一枚の写真が挟まっていた。
白黒の写真。
そこには、若き日の祖父と、見覚えのある女性が写っていた。
長い髪、知的な瞳、そして翡翠色のリボン。
「……え?」
写真の裏には、こう書かれていた。
“また、会おう。しずくより。”
遥人の心臓が跳ねた。 この名前、この顔。
まさか、そんなはずはない。
でも、確かに彼女は、今もあのカフェでラテを淹れている。